約 220,453 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2654.html
あのゲームセンター内を湧き立たせた試合から幾日。 あんなことがあっても僕たちの日常はつつがなく続いていく。 僕の学校は冬服から夏服に衣替えしたとか期末試験があったとか軽いイベントはあったけど、一番のイベントは、 宮本さんとイスカがフランスに旅立ってしまったことだ。 急遽、日本でやり残していたことを全てキャンセルして行ってしまった。 別にそんなに急ぐ必要はないのでは、と思うのだけどシオンに対して未練が残ってるからさっさと準備して日本を出てしまったのだ。 未練があるのは主にイスカらしいけど。 「ずっと見てて、飽きないの?」 朝のHRが始まる時間ちょっと前。 僕は教室に自分の椅子に座り、机に頬杖を突いている状態。 目線は机に。 座っているシオンに聞いている。 「これは姉さんが出してくれた手紙ですよ。飽きることなんてありません」 あ、そうですか。それは悪いことを聞いてしまいましたね。 思う存分にらめっこしててください。 そう思ってから、顔は窓の向こうの真っ青の空に向く。 ここの教室は3階だから空が見渡しやすいな。 昨日、僕たちに手紙が来た。差出人は宮本さんだ。 日付は旅立つ前だし、日本製の便箋なので、おそらく旅立つ前にポストに出したのだろう。 手紙の内容は宮本さんから色々、シオンに対することの謝罪とかお礼の言葉とかそんな風なのがつらつらと書かれていた。 じつのところ、書いてあったことがかなりの長文で覚えきれないので、ここでは割愛している。 だが、その便箋の入った封筒にはもう一つサイズが一回り以上違う用紙が入っていた。 シオンが持つのにちょうどいい大きさの用紙なので、おそらく神姫同士、イスカお姉さんからの手紙なのだろう。 「ねえ、それ見せてよ」 僕が昨日からお願いしてても。 「ダメです。『マスターさんにはぜったい見せるな』って書いてありますから。これは私だけに宛てた手紙なんですよ」 これなんだから。 僕の神姫なんだから、マスターの僕にそういうのは見せてほしいのだけれどな。 と、そう思考してたら僕の顔にそれが出ていたのか、シオンが言葉を詰まらせた。 「でも、螢斗さんがどうしても見たかったら反故にしても……」 「こら。お姉さんとの約束は守らないとね」 「あ、螢斗さん。ありがとうございます」 シオンは優しいから僕が命令したら見せちゃうんだろうな。 でも、別に僕がマスター権限を行使するほどイスカお姉さんの手紙を見たいわけではない。 無理に読みたいわけでもなし、シオンに嫌がれるかもと思うと僕のちっぽけな度胸はなくなってしまうのだ。 第一、神姫サイズの手紙なんて極細い文字でびっしりと文章が書かれているんだろう。そうに違いない。 ふと、気付くとHR1分前に教室のドアが思いっきり開く音がした。 そして、数秒後。 「ぜぇはぁ…………おは……よ……はぁはぁ……」 「おはよう。淳平」 「はぁはぁ、明日から夏休みという興奮で眠れなくて……な」 聞いてもいないのに、言い訳のようにそう言って僕の隣の机に身を投げ出した。 遅刻寸前だったのを全力疾走と気合いでカバーしたらしい。 淳平が言った通り明日から夏休み。 それで今日は登校した後、HRと終業式だけで終わるから遅刻はしたくなかったみたいだ。 最後くらいは遅刻しないでいよう、という良い心がけではある。 ……いつも遅刻しなかったらもっと良いのだけど。 「すいません。マスターがお見苦しいところを」 淳平に押し潰される前に胸ポケットから飛び出したミスズが机に降り立って、いつもの通り申し訳なさそうにしている。 「毎日大変そうだね。ミスズ」 「ええ。でも、私のマスターですから……マスターは優しいところもあって好きですし」 ミスズはそう言うと顔を赤くさせて、そっぽを向く。 恥ずかしいなら言わなきゃいいのに。 でも神姫のミスズは淳平が大好きだから、こんな風にフォローしてしまうのだろうな。迷惑が掛かっててもだ。 良かったね淳平、ミスズがこんな神姫で育っていて。 そう思って淳平を見ると、 「……zzZ」 寝るの早!? 淳平は机に突っ伏して寝息をかいていた。 「さすがです。ミスズさん! 武装神姫の鑑です」 突然、僕の机にいたシオンはミスズの言ったことに感動したのか、拳を握りしめている。 ミスズの顔色は元に戻り、シオンの大声に驚いている。 「シオンがそれを言うの? あなたの方がよっぽどマスター思いだわ」 「いいえ、私なんてまだまだ。私も真の武装神姫を目指して今日もひたむき走り続けているんです!」 なんかシオンが熱い。 これが本当のアーティルのあるべき姿なんだろう。 イスカと戦ってから、情熱さとか闘魂とかそういう暑苦しいのがシオンに生まれていた。 まあ、シオンが元気でいてくれるなら僕は良いけどな。 そういえば、ミスズが前に僕に対して「人間の鑑です」なんていう似たようなことを言った覚えがある。 あれから、数か月か。 懐かしいな。 シオンが僕のもとに来てから、色々なことがあって、イスカとも戦って、こうしてシオンは僕の武装神姫でいてくれる。 その現実がたまらなく嬉しかった。 僕が思いをはせている中、教室は本鈴も鳴り終わり、先生が来るのを待っていた時だ。 一陣の風が教室に入ってきて、なんとシオンの傍にあったイスカお姉さんからの手紙が飛ばされてしまった。 そして、それは窓の向こうへ。 「あ、シオン! 手紙が!?」 僕の視界に小さいけど“一行の文章”が、見えてからひらひらと校庭の方に落ちていく手紙。 あんな紙切れが草むらに入ったら見つけ出せる自信がないぞ。 幸い、この下はコンクリートの地面しかないから、風で飛ばされるとか誰かに拾われない限り、手紙はここの教室の真下にある。 「大変です! 螢斗さん!」 「わかってる!」 椅子をひっくり返しながら、シオンを胸ポケットに入れて教室のドアに駆ける。 後ろからはミスズの焦る声。 「HRがすぐにあるんですよ!?」 「終業式には戻るから、淳平起こして代返お願い!」 そう簡潔に言うと、扉を出て廊下を走り階段へダッシュ。 HRが始まってる時間に廊下を走るなんて、普段僕はしないのだけど緊急事態だからしょうがないのだ。 「螢斗さん」 「はぁはぁ……何?」 走りながらもポケットにいるシオンに答える。 結構、運動不足の僕に全力疾走は無理があるのだけど、シオンの呼びかけは無視できない。 シオンは呼んで、一呼吸置いてから。 「私も螢斗さんとずっと家族でいますから」 「……ああ、もちろんだよ!」 その言葉はイスカお姉さんの手紙にあった言葉で――。 ―――― 『 離れてても、私たちはずっと家族だ。 愛する妹へ 姉イスカより 』 ―――― Fin 前へ トップ
https://w.atwiki.jp/battleconductor/pages/64.html
はじめて触れた武装神姫のゲームは何ですか?(古株さん新規さん割合調査) 立体の武装神姫を持っていますか? コラボ先のゲームを遊んだことがありますか? コメント アンケートを取りたいものがあれば追加して下さい。 はじめて触れた武装神姫のゲームは何ですか?(古株さん新規さん割合調査) 選択肢 投票数 投票 バトルロンド 39 バトルマスターズ 38 バトルマスターズMk.2 49 バトルコミュニケーション 1 バトルコンダクター 91 立体の武装神姫を持っていますか? 選択肢 投票数 投票 MMS神姫だけ 45 メガミ神姫だけ 5 両方持ってる 46 MMS神姫(バトコンきっかけ) 15 メガミ神姫(バトコンきっかけ) 2 持ってない 56 その他(固定フィギュア、ガレージキット) 6 コラボ先のゲームを遊んだことがありますか? 選択肢 投票数 投票 ときめきメモリアル(初代) 2 ラブプラス 2 クイズマジックアカデミー 3 beatmaniaIIDX 3 スティールクロニクル 6 オトカドール 1 SOUND VOLTEX 2 コメント 古株さん60% 新規さん40% てな割合みたいね。まぁ大雑把に見れば半々。 -- 名無しさん (2021-02-22 22 25 45) 「初めて触れた武装神姫のゲーム」で、バトコンきっかけで他のゲームが初めてって事はないはずですよね?って思って削除しました。0票だったしいいよね? -- 名無しさん (2021-03-04 21 39 49) (バトコンきっかけ)の人、おいくらかかったんだろうか・・・ -- 名無しさん (2021-09-24 21 27 32) バトコンとコラボしているゲームのタイトルが増えてきましたので、それらがどれだけ遊ばれている(いた)のか興味がわいて、アンケート項目を新設しました。なおパチはジャンル外ですので除外しました(ごめんねスカイガールズ) -- 名無しさん (2023-06-16 22 30 13) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2553.html
あらすじ 2030年、異様とさえいえる加速度で発達した人類の科学は、人の脳というシステムそのものを全て量子コンピューターにコピーするという半ば強引な方法で、人間とさして変わらないレベルの思考を可能にしたAIを作り出した。このAIは以後改良を重ね、様々な形でロボットに組み込まれていくことになった。体長15cmの高性能小型ロボット。そう、2031年に発売され後に武装神姫と呼ばれる彼女達にもである。 2040年、人はついに電子の海に人の精神を送り出すことに成功する。『神姫ライドシステム』と名付けられたそのシステムは、人間の意識を機械の体である神姫の中へ、つまるところCPUという仮想空間の中に繋げることを可能にした。さらにはこれを応用し、神姫を介して別の電脳空間への接続まで実現したのである。20世紀末などにSFで描かれていた『ネットダイブ』などと呼ばれる仮想空間へのリンクを可能にした画期的な技術。だがこのような技術でさえ表立った注目をされないほど、世界は高速での発展を遂げているのであった… なんてことは置いといて時は204X年 その昔、多少は名の知れたマスターであった主人公と そのパートナーであるアーンヴァルMk2型が 神姫ライドシステムにより新しく生まれ変わった神姫バトルに挑んでみるお話。 レールアクションや武装ランク等、様々な設定は『武装神姫 バトルマスターズMk2』をプレイしてみて考察したりそのまま引っ張ってきています。 なお、武装神姫アーカイブスでライドオンシステムがヘッドギア形式と判明したので後々修正していきます。 ※上記脳のシステム云々のくだりは、戦う神姫は好きですか八話の噂話より使わせていただいております。 更新履歴 2011,10,5、初投稿 2011,10,6、コメント機能はこんな感じでいいのかなNA 2011,10,7、二話まで完成。ついでに一話をちょこっと修正 2011,10,14、2に加筆修正し、3も投稿して三話まで完成 2012,8,11、執筆再開 2012,10,11、小部屋追加 2012,11,12、4-2投下 ライドオン204X 登場人物紹介 小部屋 プロローグ 第一話・初めてのライド1 2 3 第二話・修行、しませんか1 2 3 第三話・初バトル、出会い1 2 3 第四話・だから説明書はよく読もう1 2 本日 - 昨日 - 総合 - 続きを期待してます -- 名無しさん (2011-10-06 11 21 37) ってうわーお、コメント機能付けてからまだ全然経ってないのに!コメントありがとうございます -- rotto (2011-10-06 11 29 42) フィーアと主人公の間に深い信頼関係があるのが見て取れますね、続きを期待しています。 -- umbrella (2011-10-06 23 03 33) それが伝わって何よりです。というか昨日だけで238も閲覧が…30ぐらいは忙しく更新してた自分のカウントと考えても200…嬉しい限りです -- rotto (2011-10-07 14 43 43) バトマス設定の作品はなかなかないので、結構楽しみに読ませていただいてます。更新がんばってくださいね! -- 寒天 (2011-10-08 10 19 53) コメントありがとうございますっ。美咲さんと先生の方も楽しく読ませていただいてます。カーレントナックルは使わないんだ…という妙な感想があったりなかったり -- rotto (2011-10-08 20 49 40) 弟のユキに負けてはいられないと奮起、復活。ぼちぼち更新してきます -- rotto (2012-08-11 06 50 28) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/341.html
先頭ページへ 住むべき主を無くした廃屋群。 寂れた町にはレンガの破片や風に吹かれたゴミが散乱し、見る者などいないのに信号は虚しく点滅を繰り返す。 ”ゴーストタウン”……そう呼ばれたこの場所は、0と1との信号の上に築かれた仮想現実の町。 そして、本来何者もいない筈のこのフィールドには、今確かに何者かが存在している。 ―――時は西暦2036年。2006年から繋がる当たり前の未来。 そこは、ロボットが日常的に存在する世界。 武装神姫―――彼女達はそう呼ばれている。 人間の手の平に納まる程の小さな身体に人間と同じ魂を持った、機械仕掛けのお姫様。 神姫の容姿は人のそれと全く同じ。それ故に彼女らに色とりどりの衣装を施し愛でる者も多い。 しかし、このフィールドで繰り広げられているものは武装神姫が武装神姫たる由縁そのもの。 仮想・現実問わずに繰り広げられる、弱肉強食実力至上主義、武装神姫の大舞台――― 立ち並ぶ廃屋群の中心部に佇む一層大きな廃屋の屋上、そこに彼女は居た。 ストラーフタイプの武装神姫。しかし、その面影は頭部にしか残されていない。 その黒光りする両腕は華奢な身体と不釣合いな程に巨大で物々しく、その左手には神姫の全長を軽く超える鋼の剣が握られている。 その一方で腰に着けられた紅い装甲は、スカートを模していて外観を損ねていない。 彼女の姿を見て違和感を抱かないものは少数であろう。 彼女が彼女の主から与えられた名前は”ナル”。セカンドリーグの中でもそれなりに名の知れた神姫である。 今、彼女が参加している試合は”サバイバル・バトル”形式。最後の一体になるまで終わる事が無い形式の試合である。 今回参加した神姫はナルを含め24体。試合開始から既に10分が経過しており、残りの神姫は5体減った19体となっていた。 彼女は廃屋の屋上から刻一刻と変化する現状を掌握しようとしている。 もっとも、デフォルトの光センサだけでは不可能だが、追加された超音波センサやドップラー・レーダーなどの計測機器により、 絶対とまではいかないか、それなりに掌握する事が可能となっている。 そして、その情報は神姫の主へも流れている。 「ナル、3時の方向1500sm先の2体の反応。ソレが一番近い」 「了解しました」 ナルの頭に直接、通信が入る。 主の指令を確認するようにドップラー・レーダーを確認する。 確かに指令通りの方角・距離の2体が一番近かった。 そして、その方向へと向き直り廃屋の床を踏みしめ、一気に蹴った。 推進装置の類を一切使わない脚力のみの跳躍。それだけでおよそ100smは進む。しかもほんの一瞬でだ。 一瞬の空中散歩の後、衝撃を分散するよう脚を曲げ、腰を深く落とし着地する。 そして、曲げた脚を再び伸ばして跳躍。 同じ様に跳躍と着地を繰り返して、廃屋から廃屋へとさながら飛ぶ様に目標へと接近して行く。 目標を肉眼で確認できる距離、およそ120smまで近づいた時、ナルは深く腰を沈めて前傾姿勢を取った。 そして、跳躍。ただし、今度の跳躍はただの跳躍ではない。 腰に着けられた装甲に内蔵されたブースター。それを全開にしながら跳んだのだ。 その速度は正に弾丸とも言える速度であり、120smの間を一瞬で縮めるのには充分過ぎる速度だった。 ナルは目前に迫りつつあるターゲットを確認すると、自身の記憶装置に内蔵されたデータと示し合わせる。 2体の神姫はネコ型のマオチャオ、そしてイヌ型のハウリンである事が直ぐに判明した。 2体は見るからに戦闘中であり、両者共に満身創痍と見える。 その証拠に、装甲には所々傷が目立ち、息も上がっている。何よりナルの接近にすら気付いていない。 ナルは腰のブースターを停止した。僅かに速度は下がるが、これまでで充分な加速は付いていた。 その代わりに背部の補助スラスターを少しだけ吹かす。 補助スラスターによって身体は僅かにずれ、ナルはマオチャオの背後へ向かい文字通り突撃した。 マオチャオの背後を掠めるその瞬間、左手に持った剣を大きく薙ぎ、マオチャオの右肩から左腰に向かい袈裟切りにする。 そして、脚を曲げて腰を深く落とし衝撃を分散する様に着地するが、ヒビだらけの道路を粉砕するにはまだまだ充分な破壊力を持っていた。 マオチャオは断末魔というには余りに可愛らしい声を上げ、データの塵へと化して行く。 ナルはそんな事などお構い無しにハウリンへと巨大な砲と化した右腕を向ける。 今の今までただ呆然としていたハウリンはようやく状況を飲み込んだのか、回避しようと右へ跳んだ。 しかし、ナルの右腕から放たれたエネルギーの塊はマオチャオのデータ片を飲み込み、ハウリンの両腿から下を飲み込んだ。 エネルギーの塊はなお突き進み、奥にあった廃屋に激突し衝撃波を伴う爆発を起こした。 腿から下を失ったハウリンはどうする事も出来ずにただ吹き飛ばされる事しか出来なかった。何度も何度も地面を転がった後、ようやく止まる事が出来た。 ハウリンは黒煙に包まれながらもまだ自身が動いている事に安堵した。 それと同時に先刻の事を思い出し、恐怖に身体を震わせた。 そして、自らのマスターへとギプアップの旨を伝える為に通信を開いた。 幸いにも周囲は黒煙に包まれており、視界は0に等しい。 そんな今ならば間に合うかもしれない。あのマオチャオの様な事だけは御免だと、内心焦っていた 「…ご、ご主人様! もう駄目です! 速く、助けてっ―――」 しかし、その願いが聞き届けられる事は無かった。 何故なら、ハウリンは黒煙の中から振り下ろされた剣によって、文字通り両断されてしまったからだ。 ハウリンは双眸の光センサから自身を両断していた剣がゆっくりと引き抜かれていくのを呆然と眺めていた。 ふと、剣の持ち主と目が合った。彼女は眉をぴくりとも動かさずにこちらを見つめている。 「ビームを避けた時の反応、良い反応でした。しかし、その後は無様でしたね。まさに負け犬と言った感じでしたよ?」 薄れ行く意識の中で少しムカっと来た。 「……次は楽しめることを願っていますよ」 しかし、何故だろうか。先程の恐怖感が消えていた。 もっともこの胸のムカつきに掻き消されただけかもしれないが。 断末魔を上げる事無くデータの塵となっていくハウリンを見届けると、ナルは周囲に蔓延する黒煙を払うよう乱暴に剣を大きく薙いだ。 「ご苦労様、ナル」 「ありがとうございます、マスター。…次の目標へ向かいます。指示を」 「……ナル、どうかしたのかい?」 ナルのほんの少しの違和感を感じとったのか、主が優しげに声をかけてきた。 「…いえ、何でもありません。指示をどうぞ」 少し戸惑いながらも、ナルは平静を装い主に言葉を返す。 「今のハウリンだろう?」 「……」 「今のハウリン、確かに反応は良かった。ここまで初期装備で来ただけの事はある。だけど…そこからがお気に召さなかったんだろう? だから柄にも無くあんな毒を吐いた…だろ?」 「マスター……、申し訳ありません」 心を見透かされた様な言葉に驚きを隠しつつ、何と言ったら良いか解らずナルはとりあえず謝ってみた。 「俺もだよ……あのハウリン、伊達に初期装備で修羅場を潜って来た訳じゃない。問題があるとすれば、マスターだな」 まるで自分にも言い聞かせるように主は呟いた。 「次に期待します」 「そうだな、その通りだ。今は試合に集中しよう……っと。ナル、お客さんだ」 主の雰囲気が一瞬で変わった。 先程までの穏やかな声音では無く、突き刺すような鋭い声音。 「……! 確認しました」 ナルもそれに伴い思考回路を切り替え、索敵を行う。 確かに、驚く程では無いがそれなりに近い距離に三つの反応があった。 普段はここで会話は終わるのだが、珍しく主から声がかかってきた。 「……ナル、思う存分大暴れしときな」 「…了解しました」 予想外の言葉に驚きつつ、反応がある背面に向き直る。 反応は少しずつだが確かに近づいて来ている。 恐らく、敵はこちらのセンサーが強化されているのを知らないだろう。 知っていたらジャミングくらいはかけて来ているはずである。 しかし、これから放つ攻撃は並大抵では防ぎきれないので関係無い。 そんな事を考えながら、ナルは腰を落としてブースターを最大出力で点火。真上に向かい跳躍した。 蹴られた地面が砕け散るのを一瞥もせず、只管上空へと跳び上がる。 瞬く間にゴーストタウンを飛びぬけ、神姫が点の様にしか見えない高度まで上昇すると姿勢制御スラスターを吹かして体勢を安定させる。 そして、右腕の高出力粒子砲「銃鋼(ツツガネ)」を構え、エネルギーを充填する。 右腕は唸り声を上げ、神姫の腕より一回り太い砲身の先端に淡い光が集まる。 淡い光は、より低く大きくなっていく唸り声と呼応するように輝きを増していく。 まるで太陽のような極光は、唸り声が最大限に達すると同時に掻き消えた。 不気味な程の静寂。それは正に嵐の前の静けさだった。 「ソイツを使うかい」 ナルは主に言葉ではなく、口の端を軽く吊り上げることで返した。 ナルの持つ最大最高の破壊力が、眼下のゴーストシティに向けて解き放たれた。 ナルの右腕によって放たれた、まるで雨の様な光弾はゴーストタウンを文字通り穴だらけにした。 当然、ナルを除く残っていた全ての神姫は一瞬で破壊され、サバイバル・バトルはナルの優勝と言う形で幕を閉じた。 本来、優勝者である筈のネルとその主は表彰式に出なければならないが、パスした。 当然主催者は困惑したが、賞金と賞品を辞退するという事で渋々ながらも許可してくれた。 通常、サバイバル・バトルは2~3時間程度かかるものだが今回は僅か50分前後で終了。 それに準備時間と表彰式のゴタゴタを含めば、試合開始から約1時間半。太陽はまだ高い。 町並みの中でも一層目立つセカンドリーグ・センター、そこを後にナルとその主は早めの帰路に付いた。 「まさかアレを使うとはなぁ」 「…申し訳ございません」 若干上機嫌な主の言葉を責めと取ったナルは主の大きな手の平の上で本日二度目の謝罪を口にした。 「何も怒ってる訳じゃ無いさ。あのナルがアレを使うほど苛付くなんて珍しいじゃないか」 「……うぅ」 「それに……」 「?」 「いつもシャッキっとしてるナルがガス欠で身動きできない姿なんて中々拝見できないからなぁ」 高出力粒子砲「銃鋼」、その破壊力は確かに秀逸だが、燃費がべらぼうに悪いという欠点を持っている。 その為、最大出力で撃てば追加バッテリーだけでなく、神姫本来のバッテリーを活動限界ギリギリまで食い尽くす。 よって、今のナルは主の言葉どおり頭部しか動かせない省電力モードになっている。 ナルは身動き出来ない身体を主に抱きかかえられているのと、悪戯っぽく見つめられている事からひどく赤面していた。 「ちょっと待てやッ!!」 和気藹々とした雰囲気を打ち壊すような怒号が麗らかな昼下がりの町に響き渡る。 その瞬間、主の気配が先程と180度変わったことにナルは気付いた。 「……何か、御用で?」 ゆっくりと、声の主に振り向きながら主は応えた。 ナルも別段驚きもせずその声の主を確認した。 「何か御用?じゃないわよッ!!」 その声の主は主に比べて、というか一般的な成人男性に比べて小柄な体躯で可愛らしい声の持ち主……つまり、女の子だった。 見た目15.6だろうかとナルは逡巡した。 何か主がこんな女の子に因縁を付けられる様な事があっただろうか? 心当たりが無いといえば嘘になるが、今一番可能性が高い事柄を頭に浮かべ、それが間違っていないだろうと考えた。 その女の子は左手に神姫用カーゴボックスを持っていたのだ。しかも、ご丁寧に緑を主体としたカラーリングで。 「よくもあたしのトロンベをタコにしてくれたわねッ!!」 女の子は左手にもったカーゴボックスを主に突きつけながら咆哮した。 ナルの予想は当たった。トロンベと言うのは真っ二つにしたあのハウリンだろう。 それにしても、この剣幕は鬼気迫るものがある。 「アレは恨みっこ無しの試合だ。それにタイマンだからタコ殴りは誤りだよ、お嬢さん?」 今にも掴みかかってきそうな女の子に比べ、主は飄飄としている。 当然、女の子は顔を真っ赤にながら主に詰め寄ってきた。 その距離は10cmも無く、小柄な女の子は主を少し見上げる形になった。 「もう一度あたしと勝負しなさいッ!!」 「おや、お嬢さんは俺にポイントを稼がせてくれるという訳かい」 「……この…青瓢箪が、言わせておけばッ!!」 遂に堪忍袋の尾が切れたのか、主のこめかみ目掛け右足を振り上げてきた。俗に言うハイキックだ。 神姫であるナルの目から見ても、中々鋭い蹴りだった。素人だったら一撃でダウンしていただろう。 しかし、主はそこまで柔ではない。 「……お嬢さん、熱くなりすぎだ。幾ら負けたのが悔しいからってリアルファイトは頂けない。それじゃあ本当に、負け犬の遠吠えだ」 主は女の子の右足を左手を軽く添える様に受け止めていた。 女の子はよほど自信があったのだろうか、絶句している。 「それに、女の子がそんなはしたないマネをするもんじゃないさ」 そう言うと主は添えていた手を離した。 その瞬間に女の子は飛びのく様に後退った。 「……っ、アンタ名前は!?」 「…倉内 恵太郎」 「あたしは水野アリカッ! 覚えてろよっ!!」 水野アリカと名乗った女の子は踵を返し凄まじい勢いで走っていた。 ナルはふと沸いた疑問を口にした。 「……カーゴボックス、あんなに振り回して大丈夫でしょうか」 「……マズイんじゃない」 先頭ページへ 次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/407.html
前へ 先頭ページへ 次へ BGM:リン・ジャクソン(戦闘妖精雪風・オリジナルサウンドトラック1より) 開催前夜 事前予告より二ヵ月後、2036年某月某日 2221時 ホビーショップ・エルゴ 二十二時の閉店直後からエルゴはいっそう騒がしくなった。 照明の落とされた売り場の奥の階段を上がった二階、武装神姫バトルスペースはまだ煌々と明かりが灯っており、壁一面に張られた「武装神姫大規模バトルイベント『ソラノカケラ』 ※協賛 ニャムコ」のポスターや、脇にどけられたバーチャルバトル機器が目に付く。こうしてみると意外にこの空間は広いことが分かる。 そんな中をせわしなく行ったり来たりする人影が三つ。正確に言うとうち二人は人間ではない。エルゴの若店長、日暮夏彦と、違法の人間サイズボディに乗り換えているジェニー、そして同じく人間ボディのラストである。 彼らは登録された人数分の特設バトルスペースの設営に追われていた。何の特設かと言えばもちろん、壁のポスターで大々的に宣伝されている明日のバトルイベントのものである。 直接ネットワークに繋げるため、バーチャルバトルスペースのオーナーブースだけを独立させたような個室がいくつも並べられようとしていた。 「こんなに慌ててやらなくたってよかったのに」 キャスター付きとはいえ重たい特設スペースをえいこら押しながら、ジェニーはぼそりと嫌味を言った。 「今日は臨時休業にしてゆっくり設営すればよかったじゃないですか。どうあがいたって私たち三人しか人員がいないんですよ」 「そうしたら、今日普通のバトルをしに来たお客さんが残念な思いをするじゃねーか」 すでに設置されているブースの陰で、夏彦が言う。 「できる限りのことをしたいんだよ。俺は」 「そないなカッコエエこと今言いはったって、カッコ付いてへんで」 コンソールのセットアップをしながら、ラストがカラカラと笑った。 夏彦が出てくる。女性二人のささやかな顰蹙を買ったのでものすごく不機嫌そうな顔である。 「うるせえな。だいたい冗長性広げすぎなんだよこのコンソール。一台で普通のブースの三倍の配線量ってどういうこっちゃ」 両手に抱えた大小さまざま色とりどりのコードを床に投げつけた。 「会社側としても一大プロジェクトですからね」 そのコードを丁寧に拾いながらジェニーが言った。 「この規模のバーチャルリアリティ空間を立ち上げるのは前代未聞。万全を期したいのも分かる気がします」 「ジェニーさんらしいな」 ポリポリと頬を掻きつつ、コード拾いを手伝う夏彦。 「ま、失敗したら損害どころの話じゃないからな。俺達に依頼が来るのも無理ねぇか」 そう、明日行われるこのイベントは、裏方にしてみればただのイベントに止まらなかった。コンピュータネットワーク上におけるバーチャルリアリティ空間の構築実験は今に始まったことではない。そもそも武装神姫のバーチャルバトルこそその商業利用の先駆である。 今回の空間構築は通常のバーチャルバトルの比ではなかった。今までに無い大人数での乱戦をラグなく処理するという理由だけでなく、将来的に「人間」の利用を見越した大容量を動かす壮大な試験である。つまりそのいわゆる動物実験を神姫でやろう、という言い方はかなり邪見しているが、あながち間違いではなかった。もちろん動物実験ほどのリスクなど無い。そうでなければまがいなりにも一般参加者を募ることのできるイベントとして開催することなどできないからだ。 その上で準備は万全を期していた。全国のマッチングのために特設スペースの冗長性確保は異常とも思えるほどだったし――そのせいでコストも設営スタッフの負担も異常に倍増したのは言うまでも無い――、裏方の機能維持にも猫の手を借りるほど多くの人員を割いていた。実際には猫ではなく兎であったが。 このイベントはそういう実験的な意義も含まれているため、それを邪魔しようとする敵対企業の妨害工作があることは目に見えている。それはマッチングの不備やネットワークのラグといった、普通当たり前に起こるような現象として現れるだろうが、前述のようにそれらへの対策は異常レベルであるから、どんな些細な障害も絶対に起こらないし、起こってはならない。Gのところに依頼が来るのもやむなしなのである。 「あ、夏はん夏はん、実はな、ウチんとこにも依頼来とるんよ」 「マジで? こりゃ・・・・・・俺達の想像以上かもな」 そして、当日は実際に彼らが裏で活躍することになる。 まあ、その話は書かない。読者には純粋に本大会のギャラリーとして楽しんでもらいたい。 「よし、セットアップ完了」 「まだですよ。あと十九台あります。本当にこれ全部三人でやるんですか?」 「まあ、そう言うだろうと思ってさ。たぶんそろそろ・・・・・・、来た」 夏彦の視線を神姫二人が追う。 二人の男が階段を上ってきた。 フォーマルカジュアルなコートを着こなした男性と、耳と鼻と口にピアスを刺しニット帽を被ったどこかの社会不適合者のような風体の男である。初対面の人間は大抵、彼らが親友だとは考えない。マイティのマスターと、シエンのマスター、ケンである。 「兎羽子さんと澟奈さんも一緒か。まだ仕事は残っているかな」 「店長もすみに置けねェなあ。こんな美女二人と夜中にこそこそと」 挨拶の言葉もまったく違う。微笑みながらトーンの低い声で言うマスターと、下卑た笑いでからかうケン。だが不思議と二人の投げた感情のボールに差は無い。ケンが不快感を与えているということは決してなく、むしろ親しみの含まれたボールだった。 「やあ、ホント助かります。早速お願いできますか」 「ジェニーさんはどうしたんですか?」 マスターの胸ポケットからひょっこりと顔を出したのはアーンヴァル、マイティである。ジェニー、兎羽子は一瞬ビクッと体を強張らせたが、 「俺の部屋でスリープ中だよ。今日はさんざ働かせちゃったからね」 という夏彦の自然なフォローにほっと胸をなでおろした。人間ボディの二人が実は神姫であることは伏せられているのである。 「だめだよマイティ、店長に迷惑かけちゃ。無理言って連れてきてもらったんだから」 と言ってケンの帽子から顔を出したのはハウリンのシエン。もちろんこの場合の「迷惑」とは余計な手間をかけさせるなと言う意味である。彼女達も言うまでもなく、目の前の二人の女性がジェニーやラストであることは知らない。 マイティもシエンも、明日のイベントに参加する。この設営はいわばボランティアのようなもので、彼女らは尋常でない量の配線を手伝うことになった。裏方作業といえど、特に参加者に有利になることはないからこのような事前作業の参加は禁じられてはいない。イベントの細かなルールは、マスター達はおろか夏彦にさえ知らされていなかった。ブリーフィングタイムに入り、コンソール前を離れられなくなってから参加者にだけ教えられるという予定である。設営側すらもアドバイザーにはなれず、また参加者同士で事前の作戦が立てられないのである。ブリーフィングタイムは三十分、出撃準備時間を除いて実質二十五分あるが、それだけの時間でモバイルを駆使しても有益な情報交換はほぼ不可能であろう。そうする暇があるならブリーフィングタイムに参加者同士で綿密に話し合ったほうがよい。 夜遅くまで二階の明かりは消えなかった。正午前までゆっくり睡眠をとって、彼らはイベントにのぞむ。 前へ 先頭ページへ 次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1245.html
戻る 先頭ページへ 「……それ、本当なんですよね」 それを聞いたアリカの口から洩れたのは、それを受け入れた事を表す言葉だった。 拒絶でも、否定でも、理解でも無い。ただ、受け入れただけ。 「驚かないのね、アリカちゃん」 それを話して聞かせた裕子は微笑みながら軽く目を見張った。 それを話すのは憚られただろうに、その表情に陰りは無い。 代わりに裕也が横で気まずそうにしているが。 「驚きすぎて……もう何が何だか分からなくって」 アリカはそう言って力無く笑った。 それは乾いた笑いで、感情の枯渇した笑みだった。 Red Legion。 武装神姫が発売された2031年に結成された武装神姫のチーム。 名を連ねる神姫は「赤」に類する名で呼び合い、赤い武装を身に纏っていた。 彼女達は唯只管に破壊を要求された。 勝利でなく、破壊をだ。 そんな事は、現代では許されない。闇バトルを別として。 それでも、社会に浸透する以前だった武装神姫。 戦術が確立しておらず、戦いのレベルが低かった事。 そして、リアルバトルが主流だった事。 それらの要因が絡み合い、Red Legionは生まれ、そして育ってしまった。 「そして、倉内先輩もまた、Red Legionの一員だった」 「……茜」 研究室の扉をくぐりながら茜が口を開いた。 「先輩は赤いストラーフを伴い何十体もの神姫を殺した」 ゆっくりと歩きながら、茜はアリカへと近づいていく。 「カーネリアン。紅玉露の意味。ナルちゃんの昔の名前」 アリカの目前まで辿り着いた茜は、その目を覗き込んだ。眼鏡の奥の瞳が光った。 「ロンも、カーネリアンに殺されかけた」 「……!」 その言葉に、アリカは初めて感情を表に出した。 あくまで話としての恵太郎の過去。 しかし、ここにその被害者がいる。 「……ロンは、ナルさんと恵太郎さんの事を恨んでいるのですか?」 アリカの頭の上では無く、研究室のテーブルの上でトロンベが口を開いた。 「カーネリアンの事は、恨んでないと言えば嘘になります」 天使型の蒼い瞳を伏せて、ロンは言った。 その身体は小刻みに震え、両手は強く握り締められている。 「……」 トロンベは感じた。 破壊される寸前の恐怖を。 ロンの雰囲気はそれを理解させるに十分なものだった。 「手足を捥がれ、首筋にギロチンを突き付けられ、頭上にハンマーを掲げられた……忘れも、しません」 光景が、アリカには想像できなかった。 「アル・ヴェルと蒼蓮華が止めに入ってくれなければ、私は間違いなく……死んでいました」 アリカとトロンベは絶句した。 普段の恵太郎とナルは、何処にでもいそうな神姫好きだったのだ。少なくとも、二人にとっては。 「でも、今は……違います」 ロンの青い瞳が、トロンベの瞳を捉えた。 「あの二人は変わりました。貴女達なら、それが分る筈です」 「……」 アリカとトロンベは何も言わない。 「アリカ殿を正しき道へと導いた……それこそが」 「けーくん達が変わった証拠だと僕は思ってるよ」 「孝也、お前も久しぶりだな」 扉の脇で裕也の言葉を受けた孝也は続けた。 「けーくんは、アリカちゃんの事を自分と重ねて見ていたのかもしれない」 「過去を悔いるからこそ、同じ道を歩みかけていたアリカ殿を戒めた……」 フラッシュバックする光景。 トロンベを道具と見なし、只管に勝利だけを追い求めた自分の姿。 「……何で、あたしに」 アリカは、低く呟いた。 「恵太郎君を、止めるためよ」 裕子が高々と宣言した。 「恵太郎は自身の過去を清算しようとしている」 アル・ヴェルが淡々と続けた。 「三年前は俺と姉貴で何とか出来た」 「けど、今回はそうもいきそうにないのだ」 裕也と蒼蓮華も続く。 「鍵は、貴女なのよ。アリカ」 茜の眼にアリカが映る。 儚く、今にも消えてしまいそうな少女のその姿が。 「……あたしに、何が出来るって言うのよ」 敬愛する人の過去、それを知らずに過ごしてきた自分。 「あたしは師匠の事を何も知らない!」 ただ、ついて行っただけ。 何も知らず、何も理解せず、勝手に師と仰いだ。 「皆みたいに、師匠と長い付き合いでも無い!」 裕子や裕也や孝也や、茜。誰よりも浅い時間。 感じた孤独感、疎外感。それは自分勝手な感情。 「あたしは皆みたいに役に立った事なんて無い!」 特別な技術も無く、特別な感情も持たれず、ただ勝手に付き纏った。 何も、出来ない。 「そんなあたしに……何が出来るって言うのよ!」 「違うわ、アリカちゃん」 叫び、泣いていたアリカを裕子が優しく包み込んだ。 「あなたにしか、出来ない事があるのよ」 優しく語りかける様に、裕子は言った。 「今度の恵太郎君は、3年前とは違うわ。心に芯がある」 アリカは、ただ黙って聞いていた。 「力で人を捩じ伏せるのは簡単だわ。あの時のように、力しか知らない人相手ならね」 裕子の胸に顔を埋め、アリカは黙って聞いている。 「でも、心に芯がある人は、力で捩じ伏せられても立ち上がるわ。心の芯を砕かない限り」 「……だから、なんだって言うのよ」 「アリカちゃん、貴女は恵太郎君の事好き?」 いきなりベクトルの変わった質問に、思わずアリカは顔を上げた。 「……好き」 顔を赤くしながら、しかしはっきりと答えた。 「その気持ちで、恵太郎君の心を折るの。それが、貴女にしか出来ない事」 アリカを抱いていた手を解き、腰をかがめてアリカと目線を合わせながら裕子は言った。 「それなら、孝也でも出来るんじゃないの?」 裕子の目を見つめ返しながら、アリカは言った。 「僕じゃダメなんだよ。けーくんの気持ちが分るアリカちゃんじゃなきゃね」 孝也は寂しそうに笑った。 「師匠の……気持ち」 完全に理解出来る訳では無い。 だが、トロンベを道具と扱い、それが過ちだった事に気付いた気持ちは、もしかしたら同じなのかもしれない。 「……で、具体的にはあたしは、何をすればいいの?」 「その気持ちをぶつければ良いのよ」 茜が言った。その瞳はメガネによって窺い知る事は出来ない。 「つまり……こ、こくはく?」 余りに素っ頓狂な話に、アリカの頬が上気する。 「そ、告白」 「告白ですよ、告白」 茜とロンが言った。眼が、笑っていた。 「そんなんで何とかなるの……?」 「勿論、アリカちゃんだけには任せたりはしないよ」 「拙者とクリスの出番で御座るよ」 訝しげなアリカに、孝也とトリスがこれまた楽しそうに言った。 「……先輩達は?」 頼みの綱を見るような視線で、アリカは佐伯姉弟を見やった。 「俺はそう言うの向いてないんだ」 裕也は心底済まなそうに言った。 「私は無理ねぇ。アル・ヴェルも負けちゃったもの」 「つまり……あたしと茜と孝也の三人で師匠を止めるの?」 アリカはようやく状況を理解し始めた。 「そう、僕たちと」 「拙者達、神姫でで御座る」 孝也とトリスが珍しく凛々しい表情で言った。 「んー……たかや、なんのおはなししてたの?」 「……どうも、倉内です。お久しぶりです、荒川教授」 「今はどの辺りに?……ベトナム、ですか」 「こちらにはいつ頃帰ってくるんです?」 「実は、お願いしたい事があって……」 「書類は全部揃ってます。後は教授だけです」 「……いえ、俺一人、だけです」 「はい、有難う御座います」 「では、また」 先頭ページへ 進む
https://w.atwiki.jp/morigirl/pages/1339.html
#ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (ミニイベ2top.gif) 期間 4月6日(金)15 00~4月9日(月)13 00 期間中に達成した総合売上に応じて景品が貰える♪ ◆既にコンプしているお得意様も予約が取れます。 ◆今回のミニイベントは総合売上目標をクリアするごとにアイテムが貰えます。 1,000,000円達成 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (看板猫.gif) 【店舗アバター】看板猫 ※通常のアバターアイテムではありません。 ※イベントTOPページの店舗画像に反映されます。 3,000,000円達成 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (桜吹雪引き振袖.gif) 【限定カラー】桜吹雪引き振袖(ブラック×レッド) カテゴリー ドレス 姫 小悪魔 セレブ 交換不可 オリジナルカラー お花見ガチャプレミアムアイテム 5,000,000円達成 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (ベンガルキャット.gif) ベンガルキャット カテゴリー ペット 出現位置 向かって右 姫 小悪魔 セレブ 交換不可 注意事項 ◆ミニイベント期間中に、総合売上が増えるとカウントされます。予約回数ではありません。 ◆賞品は達成回数ごとに獲得出来ます ◆賞品はプレゼント出来ません。 配置イメージ #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (comp_img.gif)
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1841.html
天使のたまご (作:Taka ) ――CSC認識、起動シークエンスを開始します ――駆動系、スキャン開始……クリア ――感覚センサー、スキャン開始……クリア ――人格プログラム、スキャン開始……クリア ――プログラム展開……基礎人格の設定を完了 ――シークエンス、オールグリーン 天使型アーンヴァル、起動します―― 目覚めの時が来た。 起動シークエンスの完了と同時に、私の中に自我が宿る。 これから私は、どのような人生を辿るのだろうか。 ……いや、きっと人生という表現は正しくない。 私は武装神姫。 人に在らざる物でありながら、人の心を与えられた者。 それ以上でもそれ以下でもない。 さあ、目を開けよう。 マスターと呼ぶべき人物が、私の目覚めを待っている。 ゆっくりと開けた視界に最初に写ったのは、三角にとがった耳と横に長くのびた白いヒゲ。 そして私をじっと見つめる、まんまるの瞳だった。 本日: - 昨日: - 累計: - 1.武装神姫、里親募集中 2.目覚めは猫の鳴き声で 3.僕と彼女とコーヒーと 4.猫侍、見参 5.ショッキング・ショッピング リンク・コラボ大歓迎です。 許可は不要ですが、報告していただけると中の人が飛び跳ねて喜びます。 ご意見・ご感想など御座いましたら、こちらへお願いいたします マルチみたいですね、ノエルさんってw …こういう日常を書くはずだったのに、どこで道を間違えたのだろう… -- 第七スレの6 (2008-05-05 21 26 56) 大変良い日常でした。ぬことノエルさんの絡みとかポイント高いです。……ほんわか日常書ける人って頭おかしいと思う(褒め言葉) -- 神姫愛好者 (2008-05-08 09 37 09) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2858.html
Nagi the combat princess 僕もハヤテのごとくなりたい。 その思い一つで、少年は空へ飛び立つ。 ※この作品はハヤテのごとく!が大好きな筆者の影響で、多数のハヤテのごとく!要素を含みます、もちろんキャラは出ません。 ちなみにこの作品内で登場する武装神姫ナギは実在します、興味のある方はハヤテのごとく!!ナイトメアパラダイスをお買い求めください。ナギの同梱版はもう売ってませんが。 文章力の無さゆえ、分かりやすさ優先のために人間のセリフは「」神姫のセリフは『』で分けて表記します。 こういったものは初めてなので、至らない点があれば教えて頂けると幸いです。 プロローグ『悪夢の楽園より』 第1話『ナギのごとく!』1 2 3 4 5 第2話『生徒会役員になる者共』1 2 旧プロローグ『悪夢の楽園より』 神姫ナギ中心のssは初めて見ました。応援します、頑張って下さい! -- absa (2014-08-13 09 24 58) 主人公の神姫が武装神姫ナギですか。どんな話になっていくか楽しみですね。 -- Tストーク (2014-08-13 20 22 46) 更新&修正しました、応援ありがとうございます。ナギが主役というかそもそも出てくる作品を見たことがなかったので(まあ正式な神姫かと言われると怪しいので当然なのかもしれませんが・・・)、自分で書いてしまえと思い執筆するに至った次第でございます。ハヤテのごとく!のそもそものコンセプトのように皆様方人気作の間で細々とやっていこうと思います、よろしくお願いします。 -- 作者 (2014-09-02 03 08 23) 面白かったです♪ 続きたのしみにしてます(^^) -- なゆき (2014-10-12 11 49 04) 更新しました、なゆきさんありがとうございます。 -- 作者 (2014-10-19 05 06 33) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1362.html
さて、夕飯後はいつものように、TV見ながらのまったりタイムです。 いつものようにマスターさんは両手で湯飲みをもって正座で、私もいつものようにマスターさんに並ぶように卓袱台の上で正座で。 最近、『いつものように』というのは、わりと高い幸せポイントを叩き出す要素なのではないかと思ったりしています。 その証拠にドッグテイルも、激しさこそないもののずっとふーりふーりと、止まることなく振られ続けているのです。 その一方で、『いつものよう』ではないからこそ幸せな部分もありまして。 具体的に言いますと、正座する私の下に敷かれた、武装神姫サイズの藍色の座布団です。 過日の神姫センター訪問の際にきちんとした正座が可能となった私に合わせ、マスターさんがお土産と称してお買い求め下さった、お気に入りの一品なのです。 武器や装備といった物以外にも、こういった痒いところに手の届くような小道具も扱っているあたり、神姫センターの品揃えは心憎いものですね。 と、マスターさんがごくさりげなく、湯飲みを卓袱台の上に置きました。 私は特に応えもなく、急須を抱えてお代わりを注ぎます。 ちなみに私の現在の装備は、ハウリン基本セットから武器と手甲・拳狼を外し、手は代わりに通常のマニュピレーターに換装しているている状態です。単純なパワーでは拳狼と腕甲・万武および胸甲・心守を連結させたほうが上ですが、やはり利便性では、指がしっかり使える通常のマニュピレーターのほうがなにかと使い勝手がよいのです。 「ありがとうございます」 深々。 「どういたしまして」 深々。 このあたりのやり取りも、すでに特別な会話は必要なくなっております。 これもまた『いつものように』な、幸せなやり取りですね。 『いつものように』あれば幸せで、『いつものようでない』ことも幸せで。 ああ、かくも世の中は幸せに満ちているのです、しみじみ。 「ところで犬子さん」 「何でしょうマスターさん」 ニュースが天気予報コーナーに変わったあたりで、マスターさんが口を開きました。 顔だけを僅かにこちらに向け膝は向けなおしていないので、話題としては軽いものになると推測されます。 とはいえこちらはお仕えする身、座布団の上でマスターさんに膝を向けなおし、拝聴する姿勢を取ります。 「ふと思い出したのですが、犬子さんにはあらかじめプログラムされた隠し芸をお持ちなのでしたよね」 「はい、ハウリン芸のことですね?」 「ええと、そんなお名前でしたっけか?」 「正確にはハウリンタイプ48の宴会芸カッコ封印指定により現在は正確には47カッコ閉じる、となっておりますが、長いので省略してハウリン芸と」 「なるほど。いえ、あれには他にどんなものがあるのかな、と思いまして」 「なるほどなるほど。では論より証拠、百聞は一見にしかず、ハウリン芸のメドレー公開をば」 「いえ! 実演の前に、ぜひとも説明を!」 ……珍しい、マスターさんがエクスクラメーションマークつきの台詞をお話になるとは。 これはアレですね、以前公開し封印指定された『ゾンビ・ハンド』が、程よくトラウマ風味になっているご様子。 確かにアレは、起動直後で人間の情緒に通じていなかったとはいえ、失敗でした。 いかにあらかじめ外されていた腕部パーツがあって下準備的に絶好のチャンスだったとはいえ、マスターさんが武装神姫がパーツ分解可能であることに違和感を感じていらっしゃった時にわざわざあの技を選ぶとは……まさに「空気読め」と言うに相応しい失態です。 ですが。だからこそなおの事、誤解は解いておく必要がありますね。 私は座布団から立ち上がりますと、にっこりとマスターさんに笑いかけました。 「ご安心ください、マスターさん。『ゾンビ・ハンド』の類な芸ばかりではございませんので。例えば……」 だん、と私は脚甲・狗駆を踏み鳴らします。そして右足を大きく踏み出しつつ、前方に素早く左右で正拳二連。 すかさず左足が跳ね上がり、前蹴り。その左足で踏み込むと同時に、両の手を開くようにして前後に掌底打ち。 そして、右腕を下から、左腕は上から大きく回し、胸の前で交差させてから、視点を右に転じ重心をそちらにずらしつつ右裏拳。 一瞬の貯めのあと、今度は視点を左に転じ、右足で回し蹴り、間を置かず左足で後ろ回し蹴り、その回転の勢いを加速させるようにジャンプし、空中で右回し蹴り。 着地と同時に身を伏せ、回転の勢いを止めずに左の脚払い。 その勢いに乗ったままで身を起こし、全身のバネを使って大きく前方に踏み込みつつ、正拳。 正拳を打ち放った姿勢を保つこと2秒ののち、私は構えを解き、マスターさんに向き直ります。 そして膝を落とし正座をすると、深々と頭を下げます。 「ハウリン芸が18、演舞の型乙・心守・無手……お粗末さまでした」 「お見事でした」 すかさず、いつの間にやらこちらに膝を向けなおしていたマスターさんから、ぱちぱちと拍手をいただきました。恐縮です。 「とまぁこのように、隠し芸の大半は『踊り』の類なのです」 「ほほう、そうでしたか」 今のも基本的には、もとより武装神姫に備わっている攻撃モーションパターンの複合なのですが、それをうまく組み合わせればちょっとした演舞になるという訳です。 「ほかにも、十手や棘輪を用いたバージョンや、吠莱を棍に見立てたバージョン、それらの複合があり、それぞれが数パターンに分かれています」 さらには、胸甲・心守を装備している時と素体の時では関節可動範囲も変わってくるため、そこでもバージョン違いが存在しまして。 「結果、『演舞』の類だけでざっと半数は占めますね」 「なるほど、さすがは武装神姫と言ったところですか」 「そして他にも、開発中にモーションテストでプログラムされたダンスなどもありまして」 踊りという見栄えがあり重心の移動の大きい動きは、デモの意味でもテストの意味でも効果が高いため、武装神姫そのものの開発期にも、我がケモテック社内での開発期にも様々なダンスが仕込まれたようです。 「それが隠し芸として犬子さんに残されているわけですか……なるほど、武装神姫が成立する黎明期から受け継がれてきたものと考えると、感慨深いものがありますねぇ」 なるほど。その視点は、私にとっては新鮮です。 「私にとっては単なる用意されたプログラムと言う認識でしたが……確かに改めてその成立に思いを馳せてみると、こう、身が引き締まるというか、足場が踏み固められたような想いです」 「そうでしょうね、それはあなた方の先達の足跡そのもの……言うなれば武装神姫の、『伝統芸能』と言ったところですから」 そのような形容をお受けすると、まだまだ歴史の浅い武装神姫なりにも受け継がれてきたものがあるという実感を得て、深く感情回路に共鳴するものを覚えます。 それにつけてもさすがマスターさん、私に感銘を受けさせるお言葉もお手の物です。 ……まぁ、私がマスターさんのお言葉ならなんでも感銘を受けるお手軽武装神姫だと言うことは置いておきましょう。 それはともかく。 「そんな訳で、私の中には様々なダンスが用意されているわけですが、我らがケモテック社製MMSともなれば、単なるダンスのさらに一つ上の芸も持ち合わせておりまして」 気を良くした私はさらなる芸をお見せするべく、立ち上がって右手を高々と差し上げ、ぱちんと指を高らかに鳴らしました。 それに呼応するように、マスターさんの座卓に備えられた私のクレイドルの傍に待機中だったプチマスィーンズが一斉に起動、螺旋を描くように一度天井近くまで上昇します。 そしてその高みから、私の背の壱号の指令を受けて、私の目の前に弐号が着地、さらにその上に参号がまたさらにその上に肆号が、どん! どん! どん!と積み上がって行きました。 すかさず私は、肆号の上に顎を載せます。 さらに私の頭部の上に伍号がどん!と着地。その衝撃に耐えながらも、フォーメーションを組み終えた私は、両手をしゃきーんと大きく雄大に広げて、芸の完成を示す最後の言葉を言い放ちます。 「トーテムポール」 ……さすがはマスターさん。常人ならば10秒は反応に困ると思われるこのハウリン芸の38を目の当りにして、わずか二秒で拍手を開始されるとは。いつもながらお見事な義理堅さです。 ちなみにこの一連の仕草及び集結の軌道は実は必要のない動作なのですが、まぁバトルならばいざ知らず芸としてお見せするならば演出も重要と言うことで、いささか芝居がかっておりますので、悪しからず。 「ええと、それで、そのトーテムポールが、ダンスの一つ上の芸なのでしょうか?」 「いいえ」 わりと微妙なバランスを保つ必要のあるトーテムポールフォーメーションでは顔が動かせないので、視線だけでマスターさんを見上げて答える私です。 「これは単に、プチマスィーンズを手元に呼び寄せるついでです」 「そうですか」 「そうです」 つまりこれからが本番です。 頭上から伍号が退いたので、私は身を起こします。 肆号、参号、弐号も順にフォーメーションを解除し、改めて私の背後、腰の高さに整列しました。 おあつらえ向きに、CMに突入したテレビからは、リズミカルなBGMが流れてきます。 「お見せいたしましょう、ハウリン芸の難易度ナンバー3、『アドリブダンスwithプチ』を!」 私はつま先でステップを刻んでCMのリズムとの同調をはかり、同時に、私の背後に控えたプチマスィーンズたちにもリズムに合わせて揺れるような機動をとらせ……そして同調を終えた瞬間、BGMにあわせダンスを開始します。 今流れているのは化粧品のCMなのですが、BGMに流れるタイアップ流行アーティストのナンバーはアップビート気味で、私はそれに対して予測演算も交えつつリアルタイムで相応しいダンスステップを検索即実行、遅滞なく身を踊らせて行きます。もちろん背後のプチマスィーンズたちにもリズムに合わせた動きをさせ、バックダンサーとして演出させます。 ……やがてCMが途切れ、別のCMに切り替わります。今度は日本茶のボトル飲料のCMで、BGMはうって変わって和風のゆったりしたリズムのものになりました。 すかさず私も処理リズムを再調整、再び同調を取ると、今のBGMにあわせたゆったりとした日本舞踊に近いダンスに切り替えます。 そんな風にCMの続く3分間、次々とBGMにあわせたダンスを披露して行きます。 ……簡単に言っていますが、わりと大変なのですよ? あらかじめ決めたリズムであらかじめ決まった機動を取るのではなく、その場に流れるBGMに相応しい動きを瞬時に選択、その選択にあわせた身体運動の制御、さらにはプチマスィーンズへの指令までをも並列処理。 しかも、それぞれが場当たり的ではいけません。ダンスとしての統一感があるように……と、口で言えば一言ですが、それを判断しうる感性の発達が大前提として必要で、つまりいわば創造性をも駆使せねばならないのです。 ハウリン芸の難易度ナンバー3に数えられるのは伊達ではないのですよ。 まぁもっとも、そんな「水面下で激しく足を動かす白鳥」的な事情は、ちゃんと説明しないとなかなかオーナーには……とりわけマスターさんには伝わりにくいのですけどね。 とはいえそれを差し引いて見ても、BGMに合わせて次々変わる、バックダンサーを従えてのダンスには見栄えがよく、それだけでもハウリン芸の上位にランクインしていることの説得力は十分かと。 CMが明けダンスも終了させた私は、座礼をしようとして……ちょっと考えてそれは止めて、代わりに頭甲を外します。 そして頭甲を持った右手を一度頭上に差し上げてから、右足を左後方に引きつつ、右手を大きく横から回すように胸の前まで持ってきながら、一礼。 ちょっと優雅を気取ってみました。 すかさず(今度は遅滞なく)マスターさんからの高らかな拍手を頂きます。 「素敵でしたよ、犬子さん」 「過分なお言葉、痛み入ります」 私は恐縮しつつ照れながら、頭甲を付け直しました。うん、セット良し。 「お気に入りいただけたようで何よりです。現状これが、私のお見せできる最高の芸ですので」 再び座布団の上に正座し、私は深々と座礼します。 その言葉に、マスターさんは首を僅かに傾げました。 「先ほど犬子さんは、今のダンスを三番目と仰っていたように思いますが?」 む、つっこまれてしまいましたか。これは私が迂闊だったと言うべきでしょう。とはいえ聞かれたら嘘が言えないのが武装神姫。答えるほかありません。あとはうまく、話題を誘導できるか否か。 「ええ、仰る通り、難易度の高いものがさらに二つあるのですが、現状ではお見せできないのです」 「ほほう? それはどういった訳なのですか?」 「はい、一つは芸として危険度が高く不適切な面もあるための自粛です。 そしてもう一方は単純に、まだ完成していないのです」 マスターさんは、再び小さく首を傾げます。 「完成していない状態で、芸として登録されているのですか?」 「はい、その芸の理論だけ与えられて、実行部分はすっぽりと抜け落ちている、そんな状態でして」 「それは不思議なお話ですねぇ。その理論と言う部分を、お聞かせ願えますか?」 「はい。その芸、『オリジナルダンス』と銘打たれたそれの解説は、『オリジナルの歌を創作し、それに合わせてオリジナルのダンスを踊る』とだけ記載されております」 「ふむ、オリジナル、ですか……」 マスターさん、それがどういうことかと思案するように、一口お茶を飲まれました。 「犬子さんは、それをどう思いますか?」 「はい」 私は居住まいを正し、ずっと考えていた答えを口にします。 「私はこれを、『開発者の皆様からのメッセージ』ではないか、と考えております」 <そのじゅう> <その12> <目次>